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前回書いていた「一万時間の法則」。
天才的な能力を持っている人は、それまでに例外なく一万時間の訓練を積んでいる、という法則です。この法則については、先日のナショナルジオグラフィックのニュースに反論記事が載っていました。
詳しくは元の記事を読んでいただくとして(元記事はこちら)、概要をざっと書くと、ミシガン大学のハンブリック教授たちは、一万時間が本当に一流の選手や芸術家を育てるのか、という課題を調べなおしたそうです。
改めて調べたところ、音楽家では一万時間~三万時間というひらきがあり、チェスの名人では832時間(少ない!)から、二万四千時間あまりというひらきがあったとのこと。そこから、
「これだけばらつきがあるのでは、一万時間という区切りに意味を見出すことはできない」
「成功の要因のうち練習 が占める割合は音楽で30%、チェスで34%にすぎない」
「良い指導を受けたかどうかが問題」
という指摘をしていました。
ここからは私の感想。
一万時間の法則については、多分に誤解されているところがあると思います。この法則が示しているのは、
「才能があっても、開花するまでには一万時間が必要」
という意味であって、
「才能のない人でも、一万時間訓練すれば天才になれる」
と言っているわけではないのです。
たとえば、前回書いた音楽家の話では、すでに音楽家としてある程度成功している人を調査対象にしています。もしかしたら、一万時間の練習をしても上達しなかった人がいるかもしれませんが、その人は調査対象には含まれていないのです。
このことは、社会人としての実感からも言えます。
一万時間といえば、会社員ならだいたい五年間あまりの勤務時間に相当します。五年間勤務した人が、みんな名人レベルになるかというと…。うーん。
長く練習しても、ルーチンワークを繰り返しているだけでは、ある段階から先に進むことはできません。上達することに使っている時間と、足踏みをすることに使っている時間の比率が重要で、何万時間が必要かはそれによって変わるはず。
単に、たくさんの時間をかけさせれば伸びる、というわけではないのです。
ハンブリック教授にしても、練習が必要ないと言っているわけではありません。ただ、時間の長さがすべてを決めているわけではないし、開花するまでに必要な時間は個人によって違うので、一万時間に特別な意味は無い。それ以外の要因をもっと研究する必要がある、というのがハンブリック教授の意見でした。
どちらかといえば、ハンブリック教授に賛成。グラッドウェル教授の言う一万時間の法則には、補足をつける必要がありそうです。
それでは、無駄なく上達するために必要なものはなにか?
という問題については、次回に書きたいと思います。
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