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2012年9月18日火曜日

モンテッソーリの言う「正常化」を脳科学で考えてみる

 ルールを守れない、人に迷惑をかける、積極性がない…。そうした問題は、しつけが原因といわれることが多いです。
 もちろんしつけや訓練として「外から型を当てる」ことは必要ですが、それだけでは不十分。子供の「中身」を育てる必要があります。

 モンテッソーリ教育では問題行動の原因を逸脱発達、つまり本来の発達コースをはずれてしまっているせいだと考えます。問題を解消する方法は、正常な発達コースを踏めるようにしてやること。
 「自らの知性と意志で自分の体を動かし、しかも心ゆくまでその活動に没頭し、自分の精神と肉体のリズムを取り戻すという、たった一つのことが必要なのです」(「ママ、一人でするのを手伝ってね」相良敦子)

 集中して体を動かす過程で問題が消えてゆくことを「正常化」と言います。モンテッソーリ教育の本を読んでいると、いろいろな問題を抱えた子供が劇的に変わる例がいくつも紹介されています。

 もちろん、ただ体を動かせばいいということではなくて、正常化が実現するには、いくつかの条件があります。

①子供が自分で選んだことに自由に取りかかること
②やり始めたことに続けて取り組むこと
③そのことに全力を傾けること(集中現象)
④以上の過程を通って、満足した表情で自分からやめること

 9月4日の「今できなくてもいいのです」で書きましたが、子どもが全力で取り組んでいる間、じっと見守るのも親としてはなかなか辛くはあります。

 
 どうして作業への集中によって、子供の人格にまで成長が起こるのか。


 敏感期と臨界期の話でも書きましたが、モンテッソーリ自身は、この集中現象による正常化を、人格を形作る決定的な要素だとみなしていました。問題児の多くは、この過程で親が押し付けをしたり、過干渉だったりすることによって、十分な集中ができなかったことによるものだと述べています。子どもの成長へのエネルギーは極めて大きく、適切な方向へ流れれば能力や人格を大きく育てることができます。しかしうまく使わなければ氾濫して問題を起こす、と主張していました。
 この理論はそれなりに納得できるところもあるのですが、現時点では証明されたわけではなく、仮説の一つだと言えます。


 そこで、今流行の脳科学的に考えてみると、以下のようになりそうです。
 脳の人格に関わる機能はほとんど前頭前皮質に集中しているとされています。自分で決めたことに集中的に取り組む行動には、行動する意思や主体性、感情の抑制(がまん)、試行錯誤による柔軟な思考など、前頭前皮質に関わる機能の多くが含まれています。手作業が前頭葉への血流を増やすことは、東北大学の川島隆太教授の実験からも明らかになっています。
 ある期間にわたってこのような刺激が続くなら、前頭前皮質の発達を促すことはむしろ当然だといえましょう。

 逆に、親によって指示や強制がある場合には自らの前頭葉で意思を発揮したり抑制したりする必要がなくなりますし、親が子どもの代わりにそうした作業をやってしまえば、訓練の機会そのものが失われてしまいます。黙って見守ることが重要な所以です。

 もしも前頭前皮質が十分に育っていなければ、計画を立てて守ることも、情動を抑制することもできません。いくら厳しくルールを教えても守れないのです。中身が育ってこそ、外面から教えられるルールが守れるようになるのだと思います。



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